生産能力計画の日程計画について解説します。
日程計画とは、「どのように作業の計画を立てていくか」、「生産能力が過負荷の場合、どのように作業計画を調整していくか」について、SAPで対応が可能です。
SAPの日程計画は、時間要素の考え方と、それぞれの時間要素をどこのマスタで設定するかを知る必要があります。
この記事では、SAPで日程計画をするための考え方とマスタ設定について徹底解説します。
その前に、生産能力計画の基本である能力評価・負荷平準化について知りたい方は、まずはこちらの記事を読んでみてください。
生産の日程計画は、作業(段取・処理・片付)だけではなく、「製造前後の余裕時間」や「開始・完了時の待ち時間」や「次工程への輸送時間」も考慮に含めなければなりません。
実際の現場でも1つの工程が終わったら、即次の工程に取り掛かれるわけではなく、モノを移動させる時間や待ち時間も発生しますからね。
以下の図が、SAPにおける日程計画の時間要素をまとめたものです。
【内製日数・入庫処理日数(品目マスタ)】
内製日数と入庫処理日数は、品目マスタのMRP2ビューで設定します。
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内製日数と入庫処理日数は、”日単位” でしかセットできないため、1日かからないのであれば、0日と設定することでもOKです。
【開放期間・製造前余裕・製造後余裕(カスタマイズ・品目マスタ)】
開放期間・製造前余裕・製造後余裕は、品目マスタのMRP2ビューの日程計画余裕キーで設定します。
日程計画余裕キーは、あらかじめカスタマイズで設定しておき、品目マスタで選択します。
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【開始待ち時間・完了待ち時間・輸送時間(作業手順マスタ)】
開始待ち時間・完了待ち時間・輸送時間は、作業手順マスタにて設定します。
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それぞれ、「標準時間」と「最小時間」の2つの時間を設定します。
通常の日程計画では、「標準時間」をベースに能力計画が実行されますが、
能力過負荷の場合、「最小時間」を使って能力計画が実行されます。
【段取時間・処理時間・片付時間(作業区マスタ・作業手順マスタ)】
段取時間・処理時間・片付時間は、作業区マスタで計算式をセットしたのちに、計算に使う値(機械時間や人時間)を作業手順マスタで設定し、時間を算出します。
ここまでで日程計画に使う時間要素を解説してきました。
この時間要素を使って、SAPでは日程計画を立てていきます。
SAPの日程計画タイプは、以下の4つがあります。
日程計画タイプは、指図タイプにカスタマイズであらかじめ割り当てておきます。
【日程計画タイプ】
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それでは、それぞれの日程計画タイプの動きについて解説していきます。
順日程計画は、計画手配・製造指図の「基準開始日」を起点に日程計画が立てられます。
例えば、以下のような計画手配があったとき、このような日程計画が立てられます。
逆日程計画は、計画手配・製造指図の「基準終了日」を起点に日程計画が立てられます。
例えば、以下のような計画手配があったとき、このような日程計画が立てられます。
本日開始は、「本日」を起点に日程計画が立てられます。
例えば、本日が 10/1 だったとき、以下のような日程計画が立てられます。
能力所要量のみは、能力所要量(作業時間)のみ算出され、日程計画が立てられません。
イメージとしては、計画手配の基準開始日・基準終了日に日時情報が入らない状態となります。
日程計画タイプが順日程計画のとき、基準開始日が過去日の場合、自動的に「本日」を起点に日程計画が立てられます。
このとき、作業で指定された削減方針によって、作業期間が削減されます。
削減方針は、カスタマイズで指図タイプ・製造計画担当者単位で設定が可能です。
削減方針には、以下の4パターンの設定が可能です。
基準開始日が過去の場合、自動で日程計画が変更されるイメージがこちらです。
ここまで「日程計画の時間要素」と「日程計画タイプごとの挙動」について解説してきました。
日程計画の時間要素は、以下のマスタで設定します。
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日程計画タイプごとの挙動は、以下のとおりです。
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日程計画は、マスタの設定がキーになります。
また、資料だけの説明ではユーザに伝わりづらいので、デモもしつつユーザ説明できるよベターです。
ユーザ説明のために、こちらの記事を参考にしてもらえると幸いです。